Nature のニュース解説(2023年3月1日)★「鳥インフルエンザの流行がパンデミックになるのを防ぐ方法」では鳥インフルエンザの現状と将来の人への脅威について解説しています。要点を和訳(意訳)したものを以下に掲載します:
先週、カンボジアで鳥インフルエンザに感染した11歳の少女が死亡し、 ペル-では今年初め、ウイルスがミンク農場を介して哺乳動物の間に広がり、鳥やアシカに大量死を引き起こしました。
この1年間で、感染死と殺処分の数を合わせると、米国では 5,000 万羽以上、ヨーロッパでも同じくらいの数の家禽が、鳥インフルエンザにより死んでいます。
既存のワクチンの問題点の 1 つは、接種した鳥がウイルス検査で陽性になることです。つまり、ワクチンを接種すると感染した鳥との区別がつかなくなりますが、この問題を解決できる新ワクチンはまだ開発の初期段階にあります。
現在、野生生物研究者達は、どの野鳥の種が鳥インフルエンザによって最も深刻な影響を受けているか、またそれが病気の蔓延にどのような影響を与えるかを調べています。 この研究は、野鳥の保護対策に役立つだけでなく、例えば、特定の鳥が渡りをすることが知られている時期と組み合わせると、鳥インフルエンザがいつやってくるのかを農家に知らせることができます。この情報が役立つのは、農家が家禽を保護するための対策として、たとえば、野鳥を引き寄せる可能性のある穀物を片付けたり、農場に入る前にブーツを洗ったりすることが挙げられますが、年中無休でこれを行うのは非常に困難だからです。
オランダのエラスムス大学医療センターの獣医病理学者 Thijs Kuiken によると、現在の H5N1 ウイルスとその祖先は、鳥の間で約 25 年間感染を続けてますが、人から人に感染する能力をまだ獲得していません。 そのため、すぐに人類がパンデミックを起こすリスクは低いですが、最近の野鳥での症例の増加と、ウイルスが哺乳類間で伝染する可能性があるという発見により、ウイルスが人間に広がり始めるリスクが高まっていると考えられます。 そのため、Kuiken は家禽部門で働く人々の監視を強化して、感染した人を迅速に検出して隔離することを望んでいます。