(株)アクトは、これまで開発してきた一連の製品に関して、それらの開発理由や性能の根拠となるような基礎的な資料を集約してきました。
ここでは、学術誌に掲載された論文や公的な機関の公開資料など、科学的な根拠があると見なしうるもののみをリストアップしました。
アクト自身が関わって作成された論文については論文化された共同研究成果をご覧ください。
このページは未だ未完成ですが、今後リストに追記していくことで充実化させていきます。
以下の記事の中で冒頭に★マークのついたタイトル部分をクリックすると、関連する外部リンクへ移動します。
注:以下のリストの各資料の「概要」説明は、それぞれの資料の要旨や要約などの全部あるいは一部を引用したものです。引用部が日本語以外の言語で書かれている場合はアクトのwebサイト編集者が可能な限り原文に忠実に翻訳したものを掲載しました。
排水処理システムの基礎資料
硝酸性・亜硝酸性窒素による地下水の汚染地下水の硝酸汚染防止のための窒素環境容量
低温環境でリパーゼを安定して生産する南極酵母Mrakiablollopisの廃水処理への応用
生物学的硝化脱窒法による排水の高度処理
し尿処理技術・システムに関するアーカイブス作成業務報告書
次亜塩素酸水の基礎資料
次亜塩素酸を活用した食中毒細菌およびウイルスの制御対策食品健康影響評価の結果の通知について(別添:添加物評価書 次亜塩素酸水)
NITEが実施した新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価に関する情報公開について
微酸性次亜塩素酸水製造装置 (ピュアスター) の開発
次亜塩素酸による洗浄・殺菌機構と細菌の損傷
微酸性電解水の線維芽細胞に対する細胞障害性の評価
次亜塩素酸電解水の細胞傷害性およびアルカリホスファターゼ活性に及ぼす影響
酸性電解水の手洗いへの適用
次亜塩素酸水溶液による環境消毒について
物体表面上のヒトノロウイルスの不活化に、液状および霧状の次亜塩素酸水溶液Steriloxを用いるための評価
弱酸性次亜塩素酸水の噴霧による浮遊ウイルスの抑制性能評価試験
バイオクリーンルームにおける微生物対策予ー次亜塩素酸水の検証を中心にー
次亜塩素酸水溶液の効能 ・ 空間噴霧の効果と安全性
世界初!次亜塩素酸水の空間噴霧の安全性がヒトを用いた臨床試験で確認される
次亜塩素酸水と過酸化水素水の dry fogging によるSARS-CoV-2とA型インフルエンザウイルスの不活化
新しい高圧噴霧システムの適用による空中の鳥病原性大腸菌 (APEC) の不活化)
鳥インフルエンザウイルスに対する酸性電解水と中性電解水の殺ウイルス効果
アフリカ豚コレラウイルスと鳥インフルエンザウイルスに対する酸性電解水の殺ウイルス効果
次亜塩素酸水の農業への応用
殺菌水の煙霧散布を利用した畜産環境コントロールシステムによる豚生産向上 (1)煙霧システムの開発殺菌水の煙霧散布を利用した畜産環境コントロールシステムによる豚生産向上(2)
殺菌水の煙霧散布を利用した畜産環境コントロールシステムによる豚生産向上 (3)煙霧システムによる簡易子豚育成装置での子豚損耗率低減
煙霧システムによる実験結果(畜産環境コントロールシステムのプレゼン資料)
中性次亜塩素酸水の浸漬および噴霧による消毒効果の検討
弱酸性次亜塩素酸水の噴霧による種卵消毒に関する研究
強酸性電解水による乳頭清拭の効果
電解水生成装置の改良と弱酸性電解水の酪農への適用
微酸性電解水によるネットメロンうどんこ病の発病抑制効果
次亜塩素酸水の食品産業への応用
弱酸性次亜塩素酸水溶液の各種芽胞に対する殺菌効果およびその適用事例討次亜塩素酸水のオフィス等への応用
次亜塩素酸水のレビュー(オフイス環境に最適)次亜塩素酸水噴霧による除菌試験 試験結果のレポート
家畜の基礎知識
暑熱対策は愛~快適な牛舎で牛を健康に飼う話~排水処理システムの基礎資料
硝酸性・亜硝酸性窒素による地下水の汚染について
掲載HP: 北海道環境生活部
概要: (冒頭部引用)
概況 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素(以下「硝酸性・亜硝酸性窒素」という。)は、平成11年2月に水質環境基準健康項目に追加され、平成13年7月から水質汚濁防止法に基づく排水規制も実施されています。近年、本道でも農業地域における硝酸性・亜硝酸性窒素に係る地下水汚染が顕在化してきており、対策の実施が急務となっています。
硝酸性・亜硝酸性窒素とは 硝酸性・亜硝酸性窒素は、硝酸イオンのように酸化窒素の形で存在する窒素で、通常は環境中に広く低濃度で分布し、自然の窒素循環の中でバランスが保たれています。しかし、近年、全国的にも地下水中の濃度が高くなっており、一般的には、過剰な施肥や家畜排せつ物の不適正処理、生活排水の地下浸透などが原因であると言われています。
硝酸性・亜硝酸性窒素による健康影響 硝酸性・亜硝酸性窒素が飲料水などに多く含まれていますと、血液の酸素運搬能力を阻害するメトヘモグロビン血症を引き起こし、特に外国では乳児が死亡した例もあるなど、人の健康を害するおそれがあります。
解説:
水質環境汚染が大規模工業地帯を有する都市部に特有のものであったのは昔の話で、現在は農村部で深刻になっていることを認識している人の割合はどれくらいなのでしょう。このHPでは、北海道が実施している硝酸性・亜硝酸性窒素による地下水汚染の常時監視結果が図示されていて、主に農業地域において汚染が広がっていることが誰の目にも明らかになっています。
「農業排水を適切に処理しなければ農業者は自分で自分の首を絞めることになってしまう。そんなことは決してあってはならない」という強い思いがアクトの排水処理システム開発の原点にあります。
地下水の硝酸汚染防止のための窒素環境容量
掲載誌: 土壌の物理性(2012)
概要: (抄録を引用)北海道では,農耕地の窒素収支を単純化し,「作物による窒素持出量」と「環境基準値と等しい濃度の浸透水に含まれる硝酸性窒素量」の合計量を窒素環境容量と定義して,農業分野における地下水の硝酸汚染防止のためのリスク評価指標としている。農耕地への窒素投入量を窯素環境容量の範囲内とすれば,浸透水の年平均硝酸性窒素濃度は概ね地下水の環境基準(10mg
L-1)未満となり,地下水汚染を引き起こすリスクは小さい。道内市町村別に推定した窒素環境容量の平均値は183kg
ha-1であったが,94~308kg ha-1の幅が認められた。農地利用形態別では,草地が218kg ha-1と最も大きく,次いで畑地が169kg ha-1,水田が157kg ha-1であった。
解説: 道内の市町村別に窒素環境容量を推 定 した論文です。通常の農薬に加え、農耕地に散布されるバイオガスプラントの消化液や、不完全な処理のまま農地に放出される農業排水などに含まれる窒素の総量がこの環境容量を超えれば、地下水の窒素汚染が起きるということになります。
An Application of Wastewater Treatment in a Cold Environment and Stable Lipase Production of Antarctic Basidiomycetous Yeast Mrakia blollopis
(低温環境でリパーゼを安定して生産する南極酵母Mrakiablollopisの廃水処理への応用)
掲載誌: PLOS ONE V.8-3(2013)
概要: (要旨を和訳して引用)
排水に含まれる乳脂肪凝固物は、低温条件下での活性汚泥処理の難処理物質の1つです。
バイオレメディエーターを使用してこの問題を解決する目的で、南極の酵母をスクリーニングし、東南極のスカルブスネスにあるナガイケ湖の堆積物の藻類マットからSK-4株を分離しました。
酵母菌株は、ITSおよびD1 / D2配列でMrakiablllopis CBS8921Tと高いヌクレオチド配列相同性(99.6%)を示し、活性汚泥に適用した際に2つの固有の特性を示しました。つまり、さまざまな炭素源を使用してビタミンを含まない条件下で成長する可能性を示しました。実際に、それは比較対照より1.25倍高い生化学的酸素要求量(BOD)除去率を示しました。
SK-4株を適用することによるBOD除去率の改善は、その株のリパーゼ活性と特性によるものと考えました。
最後に、SK-4からリパーゼを抽出して、さまざまな金属イオンや有機溶媒が存在する場合でも、その酵素が広範囲の温度とpHで非常に安定していることを見出しました。
したがって、SK-4株は、低温条件下で酪農排水から不要な乳脂肪凝固物を浄化するための、有望なバイオレメディエーターです。
解説: 活性汚泥法を用いた排水処理技術の大きな問題点として低水温での処理能力が大幅に低下するということがあります。 これまで北海道では、活性汚泥法による排水処理を冬季間は停止させるか、多大なエネルギーコストをかけて排水温度をあげるかしかありませんでした。 この問題を解決するために行ったこの研究を行い、南極から持ち帰った微生物の中から、10℃以下という低水温条件下でも活発に乳脂肪を消費するもののスクリーニングに成功しました。
生物学的硝化脱窒法による排水の高度処理
掲載誌: 生活衛生V.43-2(1999)
概要: (冒頭の一部)
生物学的処理法にはアンモニア性窒素(NH4-N)を 亜硝酸(NO2-N)あるいは硝酸(NO3-N)に酸化した後、これらの酸化態の窒素を還元し窒素ガスとして除去す る生物学的硝化脱窒法が一般的である。生物学的硝化脱窒素法(以降は硝化脱窒法と略記)は、有機性窒素 や、アンモニア性、亜硝酸性、硝酸性窒素などすべて の形態の窒素化合物に適用可能であるとともに、処理後の窒素の最終産物の窒素ガスが無公害であることか ら、広く用いられている方法である。
この生物学的室素除去技術は下水やし尿、産業排水も含め広く水処理に適用されている技術である。公有水面の埋立を行う場合には、環境保全の立場から窒素化合物の水域への放出を十分制御する必要があ る。廃棄物埋立処分場の水質管理においては、窒素化合物濃度の制御が重要な課題の一つであり、窒素制御に関する検討が鋭意すすめられてきた。窒素除去法に関しては生物学的窒素除去が主流であ るが、その主なものはほとんどが下水道などで発展してきた技術が中心である。
海面埋立処分地のような広大な水処理容量を有する酸化池での水処理方法に関しての報告は少ない。生物学的窒素除去による水処理方法の理論および技術の多くは、下水道関係で発展し、現在では大規模な実用化段階に入っている。その基本的考え方およ び方法論は廃棄物埋立処分地のような海面埋立での自然浄化機能を有効に活用する場合にも、水処理の高度化に対して参考となるものが多い。
解説: メタン発酵消化液など窒素成分の多い排水による地下水の窒素汚染が大きな社会的問題となっています。この論文は生物学的硝化脱窒法の基本について解説したものですが、この消化脱窒行程は自然界で起きている現象でもあり、人間が放出前の排水処理に適用可能であると同時に、既に窒素汚染が生じている湖沼などからの窒素除去にも適用可能ということを示唆しています。
し尿処理技術・システムに関するアーカイブス作成業務報告書
掲載HP: 環境省HP
概要: (内容一覧)
★令和元年度し尿処理アーカイブス報告書 上巻(表紙・目次)
★はじめに
★アーカイブス検討委員会名簿・執筆者及び査読者一覧
★序章 し尿・汚泥再生処理の史的背景とシステム概要
★第1章 収集・運搬及び前処理技術・システム
★第2章 衛生的処理技術・システム
★第3章 生物学的脱窒素処理技術・システム
★第4章 その他の処理技術・システム
★令和元年度し尿処理アーカイブス報告書 下巻(表紙・目次)
★アーカイブス検討委員会名簿・執筆者及び査読者一覧
★第5章 し尿・汚泥再生処理の今後の在り方
★参考資料1 し尿処理における各社の技術的取り組み
★参考資料2 し尿処理技術・システム変遷史の概略年表
★参考資料3 1945(昭和20)年以降の政治・経済・社会状況の変遷
解説: 比較的最近(令和元年)に環境省が纏めたし尿処理技術のアーカイブスです。
次亜塩素酸水の基礎資料
次亜塩素酸を活用した食中毒細菌およびウイルスの制御対策
掲載URL: http://www.mac.or.jp/mail/141001/02.shtml
概要: (おわりに)
非解離型HOClは、OCl-よりも有効塩素濃度あたりの殺菌効果が大きい。この認識は正しいが、あくまで同一かつ低い有効塩素濃度で、酸性から弱アルカリ性領域で比較した場合の話である。処理対象物が、高濃度のアルカリ剤や有効塩素に対して十分な耐薬剤性を持つならば、OH-とOCl-の相乗作用を利用した洗浄・殺菌処理の方が微生物対策(除菌と殺菌)には有効である。また、弱酸性次亜塩素酸水溶液の霧化噴霧は、人の皮膚や粘膜を刺激することなく低濃度で高い不活化効果を発揮し、室内の各種表面を濡らさない殺菌法として有望視されている。今後、冬期に多発するノロウイルス食中毒やインフルエンザ対策の一つとして、有効な活用法が普及することを期待している。
- 1.次亜塩素酸ナトリウムの製造方法と主成分
- 2.次亜塩素酸の解離特性
- 3.次亜塩素酸水溶液による殺菌メカニズム
- 4.次亜塩素酸水溶液による洗浄メカニズム
- 5.洗浄効率に及ぼす界面活性剤の効果
- 6.塩素系アルカリフォーム洗浄の効果
- 7.超音波霧化法による空間殺菌
食品健康影響評価の結果の通知について(別添:添加物評価書 次亜塩素酸水)
(食品添加物として定めた次亜塩素酸水の成分規格の変更)
報告者: 食品安全員会(2017)
概要: (冒頭の一部を引用)
今回、食品健康影響評価を求められた2種類の次亜塩素酸水は、使用後、最終食品の完成前に除去される場合、安全性に懸念がないと考えられる。
解説: 厚生労働省が食品添加物として定めた微酸性次亜塩素酸水の成分規格を変更し、新たに弱酸性次亜塩素酸水の成分規格を定めた際に食品安全委員会から提出された評価書です。この食品健康影響評価により、食品添加物(殺菌料)として「強酸性」「弱酸性」「微酸性」の3種の次亜塩素酸水が出そろいました。
NITEが実施した新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価に関する情報公開について
掲載HP: (独)製品評価技術基盤機構HP
概要: ★(最終報告書の次亜塩素酸水解説の冒頭部)
次亜塩素酸水の新型コロナウイルスに対する除去効果について、各機関(国立感染症研究所、帯広畜産大学、鳥取大学、QTEC)において99.99%以上の感染価減少率を示したサンプル及び北里大学において不活化効果ありとされたサンプルを有効と判断する。また、いずれかの機関において上記の基準を満たす物資についても有効性の判断を行うべき物資と考えられるため、個々の検証結果を精査した上で判断する。なお、次亜塩素酸水においては有効塩素濃度と溶液のpHが同等であれば消毒効果は同等と考えられ、特定の製法で生成された次亜塩素酸水の検証結果に基づいて、他の製法で生成されたものの効果も同等とみなせることから、本委員会では次亜塩素酸水(電解型)と次亜塩素酸水(非電解型)を同一の判断基準で扱うこととする。一方、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(本委員会では次亜塩素酸水(非電解型)として区分)については、水溶液中で解離平衡反応によって生じる遊離塩素が有効性に関与する持続型の次亜塩素酸水と考えられ、他の遊離型の次亜塩素酸水と性質がやや異なることから、有効性についてその他の次亜塩素酸水とは分けて判断することとする。
(中略)
以上から、帯広畜産大学及びQTECの検証試験で99.99%以上の抗ウイルス効果を確認している32ppm以上のうち、国立感染症研究所の検証試験で99.9%以上の効果を確認している「35ppm以上」を有効と判断する。
解説:
委員長の松本哲哉 国際医療福祉大学教授(日本環境感染学会副理事長)以下、国立感染症研究所、国立医薬品食品衛生研究所、大阪大学、鳥取大学、ほか関係団体他、関係省庁メンバーからなる委員会を5度にわたって開催し、CoVID-19に有効な消毒方法を議論した経緯と結果が公表されています。
消毒薬候補の検証を行ったのは国立感染症研究所、北里大学、帯広畜産大学、 鳥取大学および日本繊維製品品質技術センターです。
結果として9種類の界面活性剤と次亜塩素酸水が有効と判定されましたが、次亜塩素酸水については製造方法によらず有効塩素濃度35ppm以上、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム溶液については有効塩素濃度100ppm以上のものとされています。また、
⚫ 物品の消毒を行う際には、物品の表面の汚れ(皮脂、動植物脂等)をよく落としてから、使用してください。
⚫ 少量では十分に効果が発揮されないため、十分な量を使用してください。
⚫ 使用に当たっては、製造事業者等が提供する安全情報や使用上の注意等を十分に踏まえて、適切にご使用ください。
という注意事項も述べられています。
日本の感染症対策の権威が議論して完成させた報告で、検証実験に参加した各機関の実験方法と結果の解説が一覧でき、
5回の委員会全ての議事概要や英語版報告書なども閲覧できますので、ぜひ一度このHPを訪れてみてください。
微酸性次亜塩素酸水製造装置 (ピュアスター) の開発
掲載誌: 日本食品工学会誌 V.4-4(2003)
概要: (抄録)
微酸性次亜塩素酸水は, 従来から使用されて来た殺菌剤が抱えているさまざまな欠点を解消する目的で開発された.
その後, 安全性が認められて厚生労働省から食品添加物の殺菌料に指定された.
殺菌成分は次亜塩素酸であり, 従来から使用されている次亜塩素酸ナトリウムや塩素ガス溶液の殺菌成分と同一であるが, pHを微酸性域 (5~6.5) に制御することにより, ほとんどの塩素を殺菌力の強い遊離次亜塩素酸の形で存在させて, 低い有効塩素濃度で高い殺菌力をもつのが特徴である.
さらに, 電解条件を吟味して次亜塩素酸以外の不純物を生成しない条件を選んだこともこの水の安全性に寄与している.
従来の殺菌剤が“薬剤”としてのイメージが強かったのに対して, 微酸性次亜塩素酸水は味や匂いあるいは刺激がほとんどなく水道水に近い性質である.
したがって, 使用目的にも制約が少ないため, 食品関連産業をはじめとして幅広い分野での利用が広がりつつある.
解説: 森永乳業が販売中の微酸性電解水製造装置であるピュアスターの開発に関する論文で、電極や電解条件、特性値の制御などについて詳しく記載されていますので、電解装置設計上とても参考になります。微酸性次亜塩素酸水そのものは優れた特性を持っていますので、お勧めできます。ただ、その原料が塩酸であることがネックとなっています。濃度が10%以上の塩酸は劇物に該当しますので、取り扱い上細心の注意が必要ですし、その価格も塩化ナトリウムに比べれば高価ですので、アクトとしては3室型弱酸性次亜塩素酸水製造装置(クリーン・ファイン)を選択しました。
次亜塩素酸による洗浄・殺菌機構と細菌の損傷
掲載誌: 日本食品微生物学会雑誌 V.26-2(2009)
概要: (おわりに)
次亜塩素酸を含有する各種水溶液を有効に利用するためには,次亜塩素酸の基礎的な化学的特性を熟知して,各々の優れた機能を的確に活用することが必要である.非解離型HOCIを高比率で含有する次亜塩素酸水と弱酸性次亜水は,有効塩素濃度当たりの殺菌効果は大きくなるため,殺菌操作に使用する有効塩素濃度を大幅に低減することが可能である.一方,弱~強アルカリ性の次亜塩素酸ナトリウム溶液や電解次亜水は,有機物汚れに対して優れた洗浄力を有する.次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸水,弱酸性次亜水を万能的に使用するのではなく,使用目的が殺菌であるのか洗浄であるのかを明確にして使用することが重要である.
解説:
次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの殺菌作用や次亜塩素酸イオンの洗浄効果など、基本的なことを解説している報告です。次亜塩素酸の方が次亜塩素酸イオンよりはるかに殺菌効果が高いため、これらを主成分とする水溶液では:
(1)次亜塩素酸が優勢になる酸性(pH<6.5)の溶液は高い殺菌力
(2)次亜塩素酸イオンのみが存在する強いアルカリ性(pH>9)の溶液では水酸化イオンの溶解力による高い洗浄作用
(3)次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンが混在する中性~弱アルカリ性(6.5<pH<9)の溶液ではほどほどの殺菌力と次亜塩素酸イオンによる洗浄効果
を示すことがよくわかります。
おおざっぱに言えば、(1)は次亜塩素酸水、(2)は水酸化ナトリウム水溶液、(3)は通称「電解次亜水」と呼ばれている、一室型電解装置で食塩水を電気分解してできる水溶液に該当します。
微酸性電解水の線維芽細胞に対する細胞障害性の評価
掲載誌: 看護理工 V.9(2022)
概要: (要旨)
微酸性電解水は,薄い塩酸を電気分解して得られた pH 5.0〜6.5 の電解水で,食材の洗浄や皮膚への消毒剤として使用されている.しかしながら,現在,皮膚への消毒剤として使用されている塩素濃度(10〜30 ppm)の微酸性電解水では,病原菌である結核菌などの細菌は完全には死滅しない.今回,塩素濃度 0,25,50,75,100 ppm の微酸性電解水で作成した培地で3時間哺乳類の線維芽細胞を培養し,クリスタルバイオレット染色で接着能を,トリパンブルー染色で生存能を検討した.その結果,塩素濃度3ppm のコントロール群と比較して,塩素濃度 25〜75 ppm の培地では,接着能77〜96%および生存率 50〜56%と細胞への影響は軽度であった.塩素濃度 100 ppm の培地では,接着能 61%であった。
解説: 手指消毒に微酸性電解水を用いる場合の安全で効果のある有効塩素濃度範囲について実験で確認した報告です。 まとめとして、「塩素濃度 25〜75 ppm では軽度のダメージを与えた.手指の消毒への実用化にあたっては,皮膚にケラチンタンパクなどの有機物が存在し,すみやかに微酸性電解水が活性を失うこと,および消毒の際に微酸性電解水が皮膚に接触するのが数秒であることを考慮すると,塩素濃度 75 ppm までであれば,微酸性電解水による影響は少ないことが示唆される.」と書かれています。有効塩素濃度が25ppm以下では十分な除菌能力がない可能性があり、75ppm以上の場合は直接皮膚にかけることは避けた方が良いということです。
次亜塩素酸電解水の細胞傷害性およびアルカリホスファターゼ活性に及ぼす影響
掲載誌: 日本歯科保存学雑誌 V.54(2011)
概要: (抄録)
本研究の目的は,次亜塩素酸電解機能水(Hypochlorous-acid Electrolyzed Water: HEW)による宿主細胞への傷害性と,アルカリホスファターゼ(ALP)活性に与える影響を検討することである.HEWは,炭酸と塩化ナトリウム(NaCl)溶液を電気分解することによって生成される中性(pH7.2)で有効塩素濃度650ppmを有する電解水である.その殺菌効果は,陰イオンの活性酸素とHClOによるものと考えられている.HEWとNaOCl溶液のヒト歯髄線維芽細胞(HPC),ヒト歯根膜線維芽細胞(HPDL),ヒト末梢血好中球(PMN)およびヒト皮膚線維芽細胞三次元培養モデルに対する傷害性について,MTT assayを用いて検討した.HPC, HPDLおよびPMNを細胞培養用シャーレにて培養し,各濃度に調整したHEW, NaOCl溶液で処理した.HEWとNaOCl溶液は,濃度と作用時間に依存して細胞傷害性を示した.HEWの細胞傷害性はNaOCl溶液よりも低かった.次にHEWおよびNaOCl溶液のHPCのALP活性へ与える影響を,ALP assay kitを用いて検討した.HEWおよびNaOCl処理は,いずれも,HPC細胞のALP活性を低下したが,HEWのほうがはるかに軽微であった.三次元培養モデルにおいては,HEWの細胞傷害性はほとんど観察されず,NaOCl溶液のみが傷害性を示した.本研究は,HEWによる細胞傷害性は,NaOClよりも低く,根管洗浄剤として使用できる可能性を示唆する.
解説:
歯内療法分野における洗浄・消毒に微酸性電解水を用いる場合の安全で効果のある有効塩素濃度範囲について実験した報告です。同次亜塩素酸ナトリウム溶液についても同じ実験を行って両者の比較をして、次のような結果を得ています:
HPCとHPDLに対する細胞傷害性:HEWでは,100ppm以下の濃度に希釈すると細胞傷害性は減弱し,10ppm以下では,細胞傷害性を認めなかった。NaOCl溶液では,10ppm程度でも高い細胞傷害性があることを示した。
PMNに対する細胞傷害性:HEWは,200ppm以下に希釈することで,有意に細胞傷害性が減弱されることが認められた。NaOCl溶液では,10ppm以上で高い細胞傷害性を示したが,5ppmでは細胞傷害性は検出されなかった。
この結果を見る限りでは、NaOCl希釈溶液が各細胞に与える損傷は、同じ有効塩素濃度を持つHEWの10倍程度ということになります。 NaOCl希釈水溶液の殺菌力が同じ有効塩素濃度を持つHEWの80分の1程度という事実と合わせて考えると、HEW(次亜塩素酸水)が洗浄・除菌液として大変優れていることを改めて認識させられます。
酸性電解水の手洗いへの適用
掲載誌: 日本食品微生物学会雑誌V.24-3 pp115-121(2007)
概要: (手指汚染指標菌として S. aureus を用い、有効塩素濃度19.8ppmと38.8ppmの次亜塩素酸水のそれぞれについてpH2.9、6.0および7.7の3種類、つまり6種類の次亜塩素酸水を用意して行った手洗い実験の結果を記載した「4.酸性電解水の手洗い効果」より一部を引用)
水道水での手洗いとの比較を行ったところ,6種類の酸性電解水のいずれの場合においても明らかに手洗い効果は高かった。また薬用石鹸での手洗いとの比較を行ったところ,pHが7.7,有機残留塩素濃度が19.8ppmの場合には,薬用石鹸での手洗いよりは手洗い効果が劣るものの,それ以外の5種類の酸性電解水ではいずれの場合も薬用石鹸での手洗いと同等またはそれ以上の手洗い効果を示した.
これらの結果から,遊離残留塩素濃度が20~40ppm程度の酸性電解水(強酸性,微酸性のどちらでも可)であれば,10秒間という短時間でも薬用石鹸での手洗いと同等またはそれ以上の手洗い効果が期待できることが明らかとなった.
解説:
7段階のpH(2.3~7)x5段階の有効塩素濃度(1~10)の次亜塩素酸水(35種類)を
S. aureus
に接触させる方法での効果試験をまず行い、その後「概要」に記載した手洗い試験で薬用石鹸との効果比較を行っています。
皮膚からの落屑物をチェックすることにより、手洗いによる皮膚への影響も評価しています。
微酸性電解水を用いた手洗いで落下する角層細胞は水道水を用いた場合より少ないことと、
強酸性電解水には皮膚の角質を剥離させる効果のあることが認められました。
このようなデータの積み重ねにより次亜塩素酸水の適切な使用方法が明らかになってきたのであって、
地道ではあるが非常に重要な研究と思います。
次亜塩素酸水溶液による環境消毒について
掲載誌: 岡山実験動物研究会報V.31(2015)
概要: (要約を翻訳)
弱酸次亜塩素酸水(WAHS)は、食品(肉、野菜など)の消毒、および老人ホーム、病院、実験動物施設での環境消毒に使用されてきた。ここでは、いくつかの環境消毒テストを紹介する。
1)プレート上にある、Acinetobacterbaumanniiを接種した血液ブロットにWAHSが利用可能かどうかを調べ、次亜塩素酸ナトリウムと比較。
2)床と手すりの上でのエタノールとWAHSの比較。
3)黄色ブドウ球菌を接種したワゴンキャスターに対する、WAHSによる浅い浸漬の有効性を研究すること。
結果は次のとおり。
1)血液染みの検査では、WAHSの有効性は低濃度の次亜塩素酸塩と同等であることが観察されたが、血液の付着量が多い場合は、はるかに高濃度にするか、(血液の)物理的除去をする必要があった。
2)エタノールとWAHSは、床と手すりのテストで同等の有効性を示した。
3)ワゴンキャスターの消毒には、WAHSによる浅い浸漬が使えることが示唆された。
今後、WAHSの環境消毒への活用方法の確認を進めていきたい。
解説:
株式会社 エイチ・エス・ピーによる報告で、一般の人々にとって大学等の研究報告よりは読みやすく、より実用的といえるでしょう。
手すり、床、靴底などで実際に次亜塩素酸水を用いた結果が記載されていており、大変興味深い内容です。
「同濃度では弱酸性次亜塩素酸水溶液が次亜塩素酸ナトリウムよりも約3桁、菌数を減らしている」という結果も記載されています。
「血液付着表面の消毒について、浸漬処理だけでは不十分であったこと、ふき取り操作の物理的除去を加えることがより効果的であること」も書かれており、次亜塩素酸水で環境消毒を行う際に一度読んでおくべき報告だと思います。
Evaluation of Liquid- and Fog-Based Application of
Sterilox Hypochlorous Acid Solution for Surface Inactivation of Human
Norovirus
(物体表面上のヒトノロウイルスの不活化に、液状および霧状の次亜塩素酸水溶液Steriloxを用いるための評価)
掲載誌: Applied and Environmental Microbiology V.73-14(2007)
概要: (要旨を和訳して引用)
ノロウイルス(NV)は、一般的に最も多い胃腸炎発生の原因であり、糞便で汚染された物体の露出面に接触することによる表面媒介性感染を起こす。 NVは環境中で安定していて、長命で、感染に必要な量が少ない。いくつかの消毒剤が、物体表面のウイルスをおさえる効果があると評価されたが、処理された物体の材料に対して毒性と損傷を与える可能性があるので、それらの適用は制限される。次亜塩素酸(HOCl)水溶液(HAS)は、広い抗菌活性スペクトルを示し、一般的な使用に適している。この研究の目的は、懸濁水溶液中と無生物担体上の両方でNVを低下させるHASの有効性を評価することだった。 さらに、HOClは、大きなスペースを除染するための霧としてテストされた。 HOClの有効性は、逆転写酵素PCR(RT-PCR)によって測定された培養不可能なヒトNVと、感染力とRT-PCRの両方によって検出された2つの代理ウイルスであるコリファージMS2とマウスNVを用いて評価された。セラミックタイル(多孔質)およびステンレス鋼(非多孔質)のウイルス汚染担体を20〜200 ppmのHOCl溶液に曝露すると、曝露から10分以内に試験ウイルスの感染力とRNA力価の両方が99.9%以上(3 log10以上)低下した。限定された空間内で霧化されたHOClは、担体の位置と向きに関係なく、これらの担体のNV、マウスNV、およびMS2の感染力とRNA力価を少なくとも99.9%(3 log10)減少させた。液体または霧としてのHOCl溶液は、一般的な状況での消毒でNV曝露を減らし、それによってフォミット(病原菌を伝染できる無生物物質)を介したウイルスの拡散を制御するのに効果的である可能性が高いと結論された。
解説:
この論文で試験された次亜塩素酸水は米国ペンシルベニア州のSteriloxTechnologies, Inc.社が開発した電気分解装置Sterilox Liquid Chemical High Level Disinfectant(HLD)システムで製造されたもののようですが、論文では同州にあるPuriCore Inc.社(製造装置名はSterilox system)の提供したものとされています。両社ともバイオテクノロジー関係のベンチャーのようですがそれらの関係も実態も不明で、現在はいずれも存在していないと思われます。現在は、アラブ首長国連邦にあるSterilOx社が社名と同じ商品名SterilOxとして有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸水を容器詰めで販売しており、どのような経緯で現在に至ったのか謎めいています。
空中噴霧実験は1辺9ft(2.7m)の立方形の部屋で行われ、有効塩素濃度203±12ppmの次亜塩素酸水が毎分0.4L霧化され、生成された液滴のサイズ範囲は20〜50μmだったということです。残念ながら空中の有効塩素濃度は測定されていませんが、
(1)ウイルス担持板の表面に蓄積した液体の霧化直後の有効塩素濃度は約60ppm(初期濃度の約30%)で、蓄積の1時間後にはさらにわずかに減少(初期濃度の約25%)した。
(2)pHを5.0〜5.8に調整した次亜塩素酸水を噴霧すると、蓄積した直後の溶液のpH上昇(約1.3±0.11)が観察され、蓄積後は1時間経ってもpHの変化はごくわずかだった。
という興味深い観察結果となりました。この結果は、霧化によって次亜塩素酸(HClO)と塩化水素(HCl)のかなりの部分が失われ、その原因は経時変化というよりも霧化という物理的作用そのものであることを示しています。
最後に筆者は「次亜塩素酸水の霧の使用はノロウイルスを抑制し、それによっヒトノロウイルス感染の拡大と再発を防ぐために、広い領域を消毒するのに効果的である可能性が高い」と結論しています。
弱酸性次亜塩素酸水の噴霧による浮遊ウイルスの抑制性能評価試験
掲載HP: 次亜塩素酸化学工業会 HP
概要: (目的)
弱酸性次亜塩素酸水を霧化することによって、浮遊ウイルスをどの程度抑制できるかを、日本電機工業会規格JEM1467「家庭用空気清浄機」の附属書D「浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験」を参考にして、6畳の空間に相当する25m2試験チャンバーを用いて評価した。
解説:
北里環境科学センターによる基本的な次亜塩素酸水霧化試験結果報告です。日本電機工業会規格JEM1467「家庭用空気清浄機」の附属書を参考にして行ったもので、試験実施内容・結果ともに信頼のおける報告で、最後に
本試験では、弱酸性次亜塩素酸水を30分噴霧することで正味の対数減少値(減少率) が 2.0 (99%)以上となり、試験品は浮遊ウイルスに対して抑制性能を有すると判断さ れた。
とコメントされています。
この試験では有効塩素濃度45ppmでpH6の次亜塩素酸水を、霧化量350mL/時で25m3のチャンバー内に超音波式霧化器で噴霧しています。
30分噴霧すればチャンバー空間1m3あたりの噴霧量は45mg/L × 175mL ÷ 25m3 ≒ 0.3ppm となります。
噴霧された全量が空間に留まったとしても空気中の有効塩素濃度は約0.3ppmで、作業環境許容濃度(0.5ppm)以下にはなっています。しかし、通常の居住空間の塩素濃度はとしては0.03ppm以下が望ましいと考えられますので、チャンバー内の実際の塩素濃度の測定値が欲しかったところです。
バイオクリーンルームにおける微生物対策予ー次亜塩素酸水の検証を中心にー
掲載誌: エアロゾル研究V.31-2(2016)
概要: (英文要旨を和訳)
製薬や食品の製造施設では、微生物対策など、施設内の高水準の(清潔な)内部環境が求められている。施設の観点からの対策には、作業ゾーンの分割(ゾーニング)、およびHEPAフィルターを使用した空気の洗浄などがある。しかし、施設内で作業をしていると、粉じんの飛散や衣服に付着した微生物などが大気汚染の原因になる。本報告書では、化学物質として使用した弱酸性次亜塩素酸溶液の殺菌性能を検証した。また、実際の空間での殺菌性能は、使用する化学物質だけでなく、部屋の状態、空調設備、噴霧方法などによっても異なる。それゆえに、化学物質を使用した滅菌性能試験から、数値流体力学(CFD)モデルに必要な生データを導き出した。様々な条件下での化学物質の影響を予測できる方法を調べた結果を報告する。
解説:
室容積51m3(6畳間相当)のバイオクリーンルームで噴霧された次亜塩素酸水の殺菌効果を検証した実験結果報告です。親水性ポリエステル布に培養した黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)と大腸菌(グラム陰性菌)を付着させたものを室内5箇所に置き、超音波式噴霧器で次亜塩素酸水を1時間で1Lを0.2m3/minの風量で噴霧して、その効果を確認したものです。用いた次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムと塩酸と水を混合して,6段階の有効塩素濃度(200~5ppm、pH5.5~pH6.5)に調整したものです。
この実験がなされた条件下では、大腸菌では200ppm~25ppm、黄色ブドウ球菌では200ppm~25ppmの有効塩素濃度で完全に薬剤効果が認められました。この実験で注目されるのは、室内空間の有効塩素濃度分布が測定されていることです。有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸水を噴霧して20分後の結果では、室内のほとんどの場所で濃度は0.2~0.25ppmとなっています。このことから噴霧終了時(開始から1時間後)の室内空気中の有効塩素濃度の最大値は、200ppmの次亜塩素酸水噴霧の場合0.75ppm、25ppmの次亜塩素酸水噴霧の場合0.19ppmと予想されます。次亜塩素酸水噴霧の人体への影響を考慮する場合には大変興味深い実験結果です。
次亜塩素酸水溶液の効能 ・ 空間噴霧の効果と安全性
掲載HP: 次亜塩素酸水溶液普及促進会議
概要: (冒頭部)
次亜塩素酸は、「塩素消毒」の活性因子である。水道水の塩素消毒が代表的な例である。
濃度を適切に管理すれば、微生物には殺菌効果を示し、人には無害。蛇口から直接飲める衛生的な水を支えている。
室内空間において、微生物の存在数は「固体表面」の方が「空中浮遊菌」よりもはるかに多い。
さらに、固体表面の中では「床面」の微生物数がもっとも多い。
浮遊菌の制御は、換気や清浄空気との入れ替えで対応できるが、問題は単なる入れ替えだけでは除去できない付着菌の対策である。
解説:
次亜塩素酸水活用のための研究をなさっている三重大学大学院 生物資源学研究科の福﨑智司教授によるポスター試料です、以下のような実験結果が紹介されています:
●室内空間における次亜塩素酸の濃度の測定事例(超音波噴霧器)では次亜塩素酸の濃度は、床面が高く、天井に向かうほど低くなった。
●噴霧微細粒子のインフルエンザウイルスに対する不活化効果(超音波噴霧器)では弱酸性およびアルカリ性次亜塩素酸水溶液の場合、いずれも10分間で検出限界以下まで不活化された。
●気体状次亜塩素酸インフルエンザウイルスに対する不活化効果(通風気化方式)では低濃度の気体状次亜塩素酸への暴露の結果、コントロールと比較すると、120分で検出下限以下に達した。
世界初!次亜塩素酸水の空間噴霧の安全性がヒトを用いた臨床試験で確認される
掲載HP: @Press
概要: (冒頭部)
全国130社が加盟する一般社団法人次亜塩素酸水溶液普及促進会議(代表理事:越智 文雄)は、
新型コロナウイルスのエアロゾル感染に対する効果が期待されている次亜塩素酸水の空間噴霧について、世界で初めてヒトによる臨床試験の結果を発表しました。
次亜塩素酸水が新型コロナウイルスを不活化することは昨年6月に経済産業省・NITEの試験によりその効果が発表されていますが、
新型コロナウイルス感染防止のために次亜塩素酸水を空間噴霧する方法については、
一部メディアの誤報と根拠のない風評により吸い込むことの人体への影響を危惧する声や通達などがありました。
いままでメーカーの動物実験などにより証明されていた次亜塩素酸水の空間噴霧の安全性について、今回の世界初となるヒトによる臨床試験により再確認されました。
解説:
一般社団法人次亜塩素酸水溶液普及促進会議のプレスリリースです。
一日8時間、28日間にわたり、被試験群(10名)に対し有効塩素濃度50ppm、pH6.0±0.5の次亜塩素酸水を、対象群(10名)に対し水道水をそれぞれの部屋に噴霧し、
噴霧気体を吸引したことによる健康への影響を比較検査したものです。結果として:
身体計測、生理学検査、血液学検査、尿検査のすべての検査項目において、被験品群は対照品群と比較して有意な差は認められませんでした。
また、身体計測、生理学検査、血液学検査、血液生化学検査のすべての検査項目において、吸入前時からの変化量を比較したところ、
被験品群は対照品群と比較して有意な差は認められませんでした。
Inactivation of SARS-CoV-2 and influenza A virus by dry fogging hypochlorous acid solution and hydrogen peroxide solution
(次亜塩素酸水と過酸化水素水の dry fogging によるSARS-CoV-2とA型インフルエンザウイルスの不活化)
掲載誌: PLOS ONE
概要: (要旨を和訳)
コロナウイルス感染症2019 (COVID-19) の原因物質である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2 (SARS-CoV-2) は、主に飛沫またはエアロゾル感染によって伝染する。 ただし、接触感染によっても伝染する可能性がある。 環境表面に付着した SARS-CoV-2 は、数日間感染性を維持する。 この研究では、次亜塩素酸溶液と過酸化水素水を乾燥噴霧(周囲の物が濡れない微細霧状にした噴霧)することにより、環境表面に付着したSARS-CoV-2およびインフルエンザAウイルスを不活化することを試みた。 SARS-CoV-2 とインフルエンザウイルスをプラスチックプレート上で風乾し、これらの消毒剤の乾燥噴霧による不活性化試験のためのチャンバーに入れた。 得られた結果は、次亜塩素酸溶液と過酸化水素溶液の乾燥噴霧が、CT値(消毒剤濃度と接触時間の積)依存的にSARS-CoV-2およびインフルエンザAウイルスを不活化することを示した。 SARS-CoV-2 は、エアロゾル化された次亜塩素酸溶液と過酸化水素溶液の殺ウイルス効果に対して、インフルエンザ A ウイルスよりも耐性があった。 したがって、SARS-CoV-2 を不活性化するには、インフルエンザ A ウイルスよりも高濃度の消毒剤またはより長い接触時間が必要であった。 現在の結果は、空間噴霧によって環境表面上の SARS-CoV-2 およびインフルエンザ A ウイルスを不活化する戦略の開発に重要な情報を提供する。
解説:
本研究では、pH6.5の弱酸性次亜塩素酸水と過酸化水素水の dry fog (ドライフォグ) によって、プラスチックマイクロプレートに付着したSARS-CoV-2とインフルエンザ A ウイルスの不活化試験をしたものです。ドライフォグは、平均液滴径が 10 μm 以下、最大液滴径が 50 μm 以下のエアロゾルと定義されていて、触れても対象物を濡らさない霧のことです。
ドライフォグで空間を満たすために、500 × 700 × 300 mm (高さ × 幅 × 奥行き) のアクリル製容器を用いています。この容器内に蒸留水 20ml を入れた 90mm シャーレ、温湿度センサー、空気乾燥したウイルスサンプルを入れて、噴霧能力が毎時2.3Lの噴霧器で、平均液滴直径は7.5μmのドライフォグを噴霧し、シャーレ中の蒸留水に溶け込んだ有効塩素濃度(C ppm)を計測して、その値をウイルス容器周辺での有効塩素濃度と見なして議論しています。ただし、チャンバー内の物体の表面(環境表面)を濡れた状態にしないよう、噴霧は連続的には行わず、 実験開始後0分(5秒間)、4分(2.5秒間)、8分(2.5秒間)、12分(2.5秒間)の4回行い、全実験時間は16分です。
この実験の結果、蒸留水中の有効塩素濃度(C ppm)とウイルスがドライフォグに晒された時間(T min)の積(CT値)とウイルス力価の減少量の関係は、インフルエンザ A ウイルスではCT値およそ10でウイルス力価が検出限界以下(1,000分の1)になったものの、SARS-CoV-2のウイルス力価を検出限界以下まで下げるにはCT値が約250必要でした。つまり、SARS-CoV-2はインフルエンザ A ウイルスよりもはるかに不活化しにくいということです。
この実験条件下では、有効塩素濃度 8,700 ppm の次亜塩素酸水を用いた場合はSARS-CoV-2もインフルエンザ Aウイルスも不活化できました。しかし、有効塩素濃度250ppmの次亜塩素酸水を噴霧した場合には、チャンバー内の蒸留水中の有効塩素濃度は1 ppm程度までしかあがらず、インフルエンザ Aウイルスは不活化できたが、SARS-CoV-2 を不活化することができませんでした。
この研究の要点を、次亜塩素酸水に的を絞って纏めると、以下のようになります:
●この研究は消毒剤の噴霧による環境表面のウイルスの不活化に関するもので、空中を浮遊するウイルスを対象にはしていません。
●消毒剤の濃度と総噴霧時間に応じて環境表面の消毒剤の濃度が上がることを確認しました。
●液滴がドライフォグの形で移動したときに、液滴中の、の減少率は次亜塩素酸水の方が過酸化水素よりも大きいことがわかりしました。
●この実験条件下では、新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスよりも次亜塩素酸水に対する抵抗力が高く、250ppmの有効塩素濃度の次亜塩素酸水を環境表面が濡れない程度に噴霧した限りでは16分間以内に効果は見られませんでした。
以上の結果から、インフルエンザウイルスであればともかく、相手が新型コロナウイルスの場合は、低い有効塩素濃度(100ppm以下)の次亜塩素酸水のドライフォグで環境表面上にあるウイルスを短時間(数十分程度)で不活化するのはかなり難しいといえるでしょう。長時間噴霧し続ける場合はどうなのか、という疑問が起きるのは当然ですが、それは実験により確認する必要がありそうです。
Inactivation of Airborne Avian Pathogenic E. coli (APEC) via Application of a Novel High-Pressure Spraying System
(新しい高圧噴霧システムの適用による空中の鳥病原性大腸菌 (APEC) の不活化)
掲載誌: Microorganisms
概要: (要旨を和訳)
新しい病原性ウイルスおよび細菌によって引き起こされる家畜の感染症は、世界の動物の健康と福祉に対する主要な脅威であり、それらの効果的な制御は農業の健全と世界の食糧供給を確保するために重要です。
感染性病原体の伝染は、屋内空間で人や動物の間で発生する可能性があることが広く認識されています。
したがって、空気感染病原体の伝染を減らすには、感染管理の実践が重要です。
ViKiller® 高圧噴霧器と Deger® 消毒剤は、空気中の微生物を減らすために最適なサイズの消毒剤を生成できる新しく開発された噴霧システムです。
このシステムは、屋内空間で生存する空中浮遊細菌である鳥病原性大腸菌 (APEC) によって引き起こされる感染を軽減する目的で試験されました。
この研究では、100 ppm の遊離塩素を含む pH 中性電解水 (NEW)、実験室規模のチャンバー、最近開発された噴霧器、および従来の噴霧器が使用されました。
合計 123 羽の孵化したオスの産卵鶏 (Hy-Line W-36) を無作為に 5 つのグループに分類しました
(陰性対照: 処理なし; 処理 1: APEC なしで NEW のみを散布; 処理 2: 高圧噴霧器を使用した NEW + APEC の噴霧; 処理 3: 従来の噴霧器を使用した NEW + APEC の噴霧; 陽性対照: APEC のみの噴霧。)
チャンバー内の実験用ひよこは、実験終了時 (35 日目) まで、毎日 50 mL の NEW および/または APEC (1.0 × 106cfu/mL) に曝露されました。
APEC 株は、ViKiller® によって噴霧されました。
各グループの少なくとも 4 羽のひよこを毎週評価して、APEC 感染を監視し、病変を特定しました。
得られたデータは、私たちの噴霧システムが、チャンバー内の鳥の空気中の APEC 濃度、死亡率、呼吸器感染症、および APEC 病変を大幅に減少させたことを示しました (p < 0.05)。
結果は、APECに対してNEWを用いる新型噴霧器の抗菌効果が、従来の噴霧器と比較してはるかに優れていることを示しています。
この研究は、室内空間の空中浮遊微生物に対する予防措置に関する新しい洞察を提供します。
解説:
この研究の目的は、屋内で育てるヒヨコへのトリ病原性大腸菌 (APEC) の伝染を防ぐために、噴霧装置と消毒剤を評価することだそうでう。
そのために、実験室規模のチャンバー(3 m×1.5 m×2.0 m、2 m×1.5 m×2 mおよび2 m × 1 m × 2 m)でヒヨコを育成する間に、APECの病源対と消毒薬の両方をチャンバー内に噴霧して、実際の感染の結果を調べています。
実験に用いた消毒薬は中性の次亜塩素酸水と過酸化水素水で、噴霧装置には従来のベンチュリノズルを用いたものと、新型の高圧噴霧装置を用い、それらの効果を比較しています。実験に入る前に、新型の高圧噴霧装置によって生成された次亜塩素酸水の粒子の 90% 以上は 10 ~ 30 μm のサイズであることを確認しています。
筆者の主張するところではサイズがこれより小さいものは速やかに蒸発してしまい、大きいものは速やかに落下するため、空中浮遊病原体を不活化させるには水滴サイズを10 ~ 30 μmに制御する必要があるということです。
このことを纏めた論文中の図が大変わかりやすくできているので、和訳してここに引用掲載させていただきます。
実験結果は、5つのグループのヒヨコの健康度は、陰性対照と処理1はほぼ9割が健康、処理2は6割が健康、陽性対照と処理3はほぼ7割が発症というものでした。
つまり、旧式の噴霧器には効果が見られず、 10 ~ 30 μm の水滴を高圧噴霧する新しい噴霧器は感染を完全には防げなかったものの、明らかに効果はあったということです。
以上の結果をグラフ化したものもここで引用掲載しておきます。
この論文の本文中には、さらに次のような説明があります(要点のみ):
●養鶏場の表面除染によるバイオエアロゾルによる空間消毒は、養鶏における汚染の生物学的リスクを軽減するために重要です。
●世界保健機関 (WHO) は、霧の液滴の直径が 10 ~ 30 μm が空間消毒に最適なサイズであると報告しました。
●トリ病原性大腸菌 (APEC) は、鶏卵業界で最も一般的な感染性細菌性疾患の 1 つで、世界中のブロイラー産業に深刻な経済的損害を引き起こす可能性があります。
●APECは空気感染病原体として鶏の群れから群れへ空気伝染します。
Virucidal effect of acidic electrolyzed water and neutral electrolyzed water on avian influenza viruses
(鳥インフルエンザウイルスに対する次亜塩素酸水の効果)
掲載誌: Archives of Virology V.159(2014)
概要: (英文要旨を和訳)
鳥インフルエンザウイルスに対する酸性電解水(AEW)と中性電解水(NEW)の殺ウイルス効果を調べた。高病原性H5N1ウイルスと低病原性H9N2ウイルスのウイルス力価は、ウイルスが43ppm以上の有効塩素(FAC)を含むNEWと混合された後、1分で99.999%超減少したが、 17ppm未満のFACを含むNEWとの混合では減少しなかった。NEWが殺ウイルス効果を持つためのFACの最小濃度は約40ppmと推定される。
対照的に、ウイルスがFAC72~0ppmのAEWと混合された後、ウイルス力価は1分で99.999%超減少した。つまり、AEWの殺ウイルス効果はFACに依存なかった。
AEWで不活化されたウイルスから抽出されたRNAから、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応はMおよびNP遺伝子の断片を増幅したが、完全なM遺伝子は増幅されなかった。AEWで不活化されたウイルスについて、電子顕微鏡下で中程度の形態学的変化が見られたが、電気泳動させたタンパク質には変化は観察されなかった。
標的遺伝子の長さに関係なく、NEWで不活化されたウイルスから抽出されたRNAからウイルス遺伝子は増幅されなかった。NEWで不活化されたウイルスについて、電子顕微鏡下ではウイルス粒子は検出されず、電気泳動でもウイルスタンパク質は検出されなかった。以上のように、この研究は、AEWとNEWの強力な殺ウイルス効果と、2種類の電解水の殺ウイルスメカニズムの違いを露わにした。
解説:
鳥インフルエンザウイルスに対する酸性電解水(次亜塩素酸水)の有効性を確認したという、帯広畜産大学のメンバーによる報告です。
次亜塩素酸水のユーザーの立場から注目すべきは、鳥インフルエンザウイルスに対して:
1. 酸性電解水は有効塩素濃度がゼロでも効果があった。
2. 中性電解水の場合、有効塩素濃度17ppm未満のは効果がなく、有効となる有効塩素濃度は40ppm以上と推定される。
ということです。つまり、鳥インフルエンザウイルスに対しては高い有効塩素濃度と低いpHのどちらも有効であるということになります。
Virucidal efficacy of acidic electrolyzed water (AEW) against African swine fever virus and avian influenza virus
(アフリカ豚コレラウイルスと鳥インフルエンザウイルスに対する次亜塩素酸水の効果)
題目:
掲載誌: Journal of Veterinary Medical Science V.83-2(2021)
概要: (英文要旨を和訳)
獣医消毒剤の有効性試験に関する動植物検疫局(APQA)のガイドラインに従って、アフリカ豚コレラウイルス(ASFV)および鳥インフルエンザウイルス(AIV)に対する酸性電解水(AEW)の殺ウイルス効果を評価した。 AEW(pH 5.0〜6.5)は、5〜140 ppmの有効塩素濃度(FCC)を達成する市販の「電解水発生器」を使用して製造され、それ(AEW)が低レベルおよび高レベルの有機汚染条件の懸濁液中で、ASFVおよびAIVの力価を低下させる効率を試した。
低レベルの有機汚染条件下では、FCC≥40ppmのAEWがASFVに対して有効であり、高レベルの有機汚染条件下では、FCC≥80ppmのAEWが有効だった。低レベルの有機汚染条件下では、FCC≥60ppmのAEWがAIVに対して有効で、高レベルの有機汚染条件下では、FCC≥100ppmのAEWがAIVに対して有効だった。AEWの殺ウイルス効果は、FCCと有機汚染の存在に依存しているように見えた。
これらのデータに基づいて、低レベルおよび高レベルの有機汚染条件下での、獣医学分野での日常的な消毒のためのAEW処理における最低のFCCを次のように推奨する: ASFVの場合はそれぞれ50ppmおよび100ppm、AIVの場合は75ppmおよび125ppm。
結論として、ASFVおよびAIVに対するAEWの殺ウイルス効果は、消毒剤として使用できる可能性を強く示している。そして、AEWを実際の現場での効果的な管理手段として用いる際には、有機的な汚れの状態を考慮することを勧める。
解説:
韓国の研究者グループによる比較的最近の報告で、市販の電解水発生器で作られた次亜塩素酸水のアフリカ豚コレラウイルス(ASFV)と鳥インフルエンザウイル(AIV)に対する効果を検証したもので、以下のことが読み取れます:
1. 「酸性電解水」と記載されているものの、この研究で用いたものは「微酸性次亜塩素酸水」に相当し、pHが高い。従って有効塩素濃度が低いものは効果が無いという結果になった。
2. 有機物による汚染が少ない場合、有効塩素濃度がASFVに対しては40ppm以上、AIV対しては60ppm以上あれば有効。
3. 有機物による汚染が多い場合、より高い有効塩素濃度が必要となるので、実際の使用現場では有機的な汚れの状態を考慮することが重要。
もちろん、汚染状態と有効塩素濃度のみを考慮すれば良いわけではなく、洗浄・除菌には多めの量の次亜塩素酸水を用いることも重要です。
次亜塩素酸水の農業への応用
殺菌水の煙霧散布を利用した畜産環境コントロールシステムによる豚生産向上 (1)煙霧システムの開発
掲載誌: 沖縄県畜産研究センター試験報告 V.48 pp29-36(2011)
概要: (要約)
"本研究では公園などの暑熱対策として利用されている煙霧散布と,食品添加物としても安全性に懸念のない微酸性次亜塩素酸系殺菌水を組み合わせた煙霧システム(以下煙霧システム)を開発し,豚舎内における利用について検討した。
1. システム利用により豚舎内で、直接煙霧と送風があたる場所では 3.2℃冷却された。換気などの改善により,効率の良い冷却効果の可能性が示唆された。
2 簡易殺菌水製造器を作成した結果,性状検査および殺菌効果から,低価格で有効な殺菌水の製造が可能である。
以上のことから煙霧システムの豚舎への応用は可能性(原文ママ)である 。"
解説: 次亜塩素酸ナトリウムと希塩酸を水道水で混和・希釈するタイプの市販の微酸性次亜塩素酸水製造装置と、同様の動作をする自作装置の両方を比較しながら用いて、陽豚舎における消毒効果と温度低減効果を試験した結果が報告されています。 自作装置の目標値を有効塩素濃度 50~100ppm、pH5.5~6. 5として、実測値は有効塩素濃度の平均値が75.54ppm,pHの平均値が5.61ということです。
殺菌水の煙霧散布を利用した畜産環境コントロールシステムによる豚生産向上(2)
掲載誌: 沖縄県畜産研究センター試験報告 V.48 pp37-41(2011)
概要: (要約)
本研究では,公園などの暑熱対策として利用されている煙霧散布と,食品添加物としても安全性に懸念のない微酸性次亜塩素系殺菌水を組み合わせた煙霧システムを豚舎での応用を検討した結果,冷却と殺菌が可能である。
そこで煙霧システムを活用し,豚舎での夏季の暑熱対策と衛生環境の効果を検証するため肥育試験を実施した。
1.最も気温の高かった8月に畜舎内温度を0.52℃低減した。
2.肥育への影響は,日増体成績では試験区と対照区は同等の結果であった。
しかし日中の平均外気温が30℃を超えた週については,対照区では増体量が低減したのに対し,試験区では安定的に増体した。
このことから暑熱低減効果による肥育豚への影響が示唆された。
枝肉成績については,差が認められないことから殺菌水の煙霧による散布は,肉質に影響を及ぼさないものと考えられた。
3.豚舎内の衛生環境への影響は,対照区と試験区煙霧前は同等の落下菌数であったが煙霧後20分でも細菌が少ない傾向が認められ,殺菌水の継続的な効果が確認できた。
以上のことから煙霧システムによる安定的な肉豚生産の可能性が示唆された。
解説: 気温の上がる7月から9月の3ケ月間、前報告に記載されている装置を用いて、1豚房当たり 4ノズルを豚床から80cmの高さで水平方向へ煙霧できるよう設置し、午前 8時から午後 8時まで1時間毎に1分間(1ノズルあたり150ml)の弱酸性次亜塩素酸水を噴霧して、その効果を確認した試験です。空間消毒効果はKochの空中落下細菌法により測定していて、噴霧直後に菌数が減少する効果が認められたものの、噴霧量から予想されるように劇的な低減効果はなかったようです。
殺菌水の煙霧散布を利用した畜産環境コントロールシステムによる豚生産向上 (3)煙霧システムによる簡易子豚育成装置での子豚損耗率低減
掲載誌: 沖縄県畜産研究センター試験報告
概要: (要約)
本研究では,公園などの暑熱対策として利用されている煙霧散布と,食品添加物としても安全性に懸念のない微酸性次亜塩素酸系殺菌水を組み合わせた煙霧システムを,簡易子豚育成装置での応用するため,繁殖を主とする農家にて実証試験を行なった結果,子豚の損耗率が改善する傾向が見られた。
1. 殺菌水を散布した試験区では,導入頭数356頭,へい死・淘汰頭数4頭となり,損耗率は1.1%であった。
散布を実施しなかった対照区では,導入頭数363頭,へい死・淘汰頭数11頭となり,損耗率は3.0%となった。
両区に有意差は認められなかった。
2. へい死・淘汰頭数がもっとも多かったのは試験区・対照区ともに11月であったが,試験区3頭に対し対照区8頭と試験区の方が少ない傾向が見られた。
解説: 前報告の試験に引き続いて、9月から11月の3ケ月間の実証試験を行った結果が記載されています。 700頭以上の子豚を試験区と対象区の2つに分けて実施したもので「試験区の方が良好な成績となる傾向が見られた」とやや控えめな結論がなされています。確かに試験区と対象区に極端な差がないとはいえ、効果があるのは見て取れますので、低コストで導入できるものであれば夏期間中だけでもこのような装置を用いることは有意義であると思います。
煙霧システムによる実験結果(畜産環境コントロールシステムプレゼン資料)
掲載HP: 沖縄県畜産研究センターHP
概要: (殺菌水の煙霧散布を利用した畜産環境コントロールシステムによる豚生産向上 (1)~(3)を纏めてプレゼンテーション資料としたもの)
解説: 沖縄県畜産研究センターが出した一連の試験報告「殺菌水の煙霧散布を利用した畜産環境コントロールシステムによる豚生産向上(1)~(3)」の全容をプレゼン用資料にしたものと思われます。
中性次亜塩素酸水の浸漬および噴霧による消毒効果の検討
(養鶏への応用)
掲載誌: 日本家禽学会誌 V.47-1(2011)
概要: (要旨より引用)
鶏舎壁面や飼育器材への付着、および鶏舎に浮遊する粉塵等の有機物に付着した病原体による感染症を防除する対策として、器材の浸漬消毒や鶏舎内の噴霧消毒がある。本研究では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を塩酸でpH7.0に調整した中性次亜塩素酸水(以下NAHSと記す)の浸漬および噴霧消毒液としての有用性を4つの試験により検討した。
...(中略)...
以上の結果から、NAHSは浸漬および噴霧による消毒効果が認められた。今後は、養鶏分野におけるNAHSの適正な濃度、浸漬時間および噴霧量などを検討する必要がある。
解説:
この研究結果は畜産現場で用いられている消毒剤2種類(A、B)と次亜塩素酸水(C)の有効性を比較したものです。
A: [モノ,ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]-アルキルトルエン
B: 塩化ジデシルジメチルアンモニウム
C: 次亜塩素酸ナトリウム水溶液を塩酸でpH7.0に調整した中性次亜塩素酸水
浸漬液として用いた場合も、噴霧消毒液として用いた場合も、C(有効塩素濃度50ppm)の方がA、B(いずれも0.2%溶液)と同等以上の効力を示すという結果になりました。
もちろん、有効性だけではなく、安全性においてもCの方が優れていることは云うまでもないと思います。
弱酸性次亜塩素酸水の噴霧による種卵消毒に関する研究
(養鶏への応用2)
掲載誌: 防菌防黴 V.34-8(2006)
概要: (要旨)
弱酸性次亜塩素酸水(WAHW)は次亜塩素酸ナトリウムに塩酸を混合してpHを5.5~6.5に調製したものである。本研究では種鶏場における種卵消毒にホルマリン燻蒸の代替法として弱酸性次亜塩素酸水の噴霧消毒法が適用できるかどうかの検討を行った。基礎試験において、ガラスシャーレ表面上にS.aureus、試験用卵殻表面上に種卵から採取した卵殻表面存在菌をそれぞれ塗布してWAHWの噴霧処理を行った結果、残存率は1%以下となり消毒効果が認められた。実用試験においては種卵168~1848個を7.1mg/m3・1.5時間の条件でWAHWの噴霧消毒を行った。その結果、卵殻表面の消毒効果および対熟孵化率とも、現行のホルマリン燻蒸とほぼ同等であった。以上の結果より、本方法はホルマリン代替種卵消毒法として有用性が高い方法であることが示唆された。
(この和文要旨の掲載URLは★こちらです)
解説: 日本では生卵を食べる習慣があるので、食中毒を防ぐために他の国々に比べてはるかに厳格な卵の洗浄・消毒が行われています。 しかし、サルモネラ菌等に汚染された親鶏が生んだ卵は殻内が汚染される場合があり、このような卵の外側をいくら洗浄・消毒しても食中毒を防止できません。汚染されたいない鶏を育てるための第一歩として種卵の消毒が必要になりますが、その手段として安価で殺菌カが高いホルマリン燻蒸が行われてきました。しかしホルマリンは作業者の限の粘膜や肺に強い刺激を与え、発がんリスクもあるとされています。この論文では、ホルマリン燻蒸と同等の効果を有しながら人体にはほぼ無害である弱酸性次亜塩素酸水による噴霧消毒が適用できると述べられています。
強酸性電解水による乳頭清拭の効果
掲載誌: 北海道畜産学会報V.44(2002)
概要: (抄録)
搾乳時における強酸性電解水による乳頭清拭の効果を検討した.同一泌乳午の右前後乳頭を強酸性電解水で,左前後乳頭をNaClO溶液で清拭し,乳頭清拭の前後に各々の乳頭表皮5cm²を拭き取り,一般細菌数,乳酸菌数,高温菌数,嫌気性菌数,低温菌数および大腸菌群数を測定し,両者の清拭効果を比較した.強酸性電解水は,NaClO溶液と同等の乳頭清拭効果を示し,乳頭表皮の汚染菌数が10³cfu/cm²以上ある一般細菌,乳酸菌,高温菌および嫌気性菌の乳頭清拭後の残存率は2.8-7.6%,10²cfu/cm²以下の低温菌数と大腸菌数の残存率は10.0-14.5%であった.乳頭清拭の効果は作業者に近い乳頭の方が高い傾向がみられた.各乳頭表皮の汚染細菌数は菌種毎に類似の水準を示し,低温菌は夏から冬に向かって漸増したが,その他の5菌種は夏から冬にかけて漸減する季節的変動を示した.強酸性水とNaClO溶液による乳頭清拭の効果は季節的な影響を受けず,ほほ一定であることが認められた.
解説: 有効塩素濃度20~30 ppm、pH2前後の強酸性電解水を用いた乳頭清拭の効果を有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム溶液の効果と比較し、ほぼ同等であるという結果を得ています。報告によると「帯広畜産大学附属農場で飼養されている健康なホルスタイン種泌乳牛を用い,2000年6月から12月まで毎週 1回づつ搾乳時にミルキンクゃパーラーと繋ぎ牛舎から無作為に1頭づつを選抜し,総計 27頭,108乳頭を検査した」ということで、このような長期間の試験により「乳頭清拭の効果には季節的な変動が認められず,年間を通しでほぼ一定の清拭効果が発揮されている」と締めくくられています。
電解水生成装置の改良と弱酸性電解水の酪農への適用
掲載誌: 農業機械学会誌V.65-1(2003)
概要: (はじめに)
酸性電解水は食塩水等のイオン結合塩化物水溶液を電気分解して陽極側で得られる溶液であり,液中に含まれる遊離形有効塩素が殺菌効果の主成分である。その特徴は,次亜塩素酸ナトリウム液より低濃度でも殺菌力が高い,殺菌スペクトルが広い,肌への刺激がない,残留性が低い,等であり減農薬栽培における病害防除への利用が検討されている。畜産では,GPセンターにおける鶏卵洗浄,畜舎施設の床面や壁面,搾乳装置の配管等の洗浄等に適用されている。また,豚の皮膚炎治療,鶏舎内を浮遊する粉塵に付着する微生物の殺菌を狙いとした煙霧散布が試みられている。しかし,事例的な導入はある
ものの実際には広く普及していない。その理由として,生成機器の導入コストが高い,次亜塩素酸が有機物と反応し易く殺菌効果が得られない場合がある,等があげられる。今後,生産現場への普及を図るためには,導入コストの低減と確実な殺菌効果を得るための利用方法の確立が重要な課題である。このような背景から,酪農における洗浄・殺菌作業に酸性電解水を利用するためのシステム化や施用方法等について検討したので紹介する。
解説: 永乳業(株)のピュアスターとおぼしき装置の改良について簡単に述べられている他、搾乳装置や施設内の殺菌と乳頭洗浄について試験した結果が纏められています。次亜塩素酸水の洗浄・除菌効果は広く認められているものの、実際の現場での個々のケースでは期待した効果が得られないこともあり、この報告でも「酪農の生産現場で利用する場合、高い殺菌効果を得られる場面と、効果を期待できない場面があり、今後、素材や他の方法と組み合わせた利用方法についてさらに検討する必要がある。」と結論されています。
微酸性電解水によるネットメロンうどんこ病の発病抑制効果
掲載誌: 宮崎大学農学部研究報告V.59(2013)
概要: (要約)
施設栽培環境において,病害,特にうどんこ病に弱いネットメロンに微酸性電解水を定期的に散布してうどんこ病の抑制効果を検討し,微酸性電解水の植物病害抑制利用の普遍性について考察した。施設栽培のネットメロンに微酸性電解水を散布すると,微酸性電解水区において,うどんこ病の発病葉率(%)及び発病度はいずれも対照区の50%以下と顕著に発病が抑制された。また,慣行区(通常通りに殺菌剤を散布した区)と比較しても,微酸性電解水区はうどんこ病の発病葉率(%)及び発病度ともに低い値となり,防除価も平均60以上と高い防除効果を示した。また,微酸性電解水処理による植物の生理障害等(薬害,生育不良,生産低下など)は認められなかった。しかし,微酸性電解水区では,葉の重なった部位に病斑の残存が認められ,この葉の重なり部位における病斑が病害の継続性に関与していた。これらの結果から,微酸性電解水の定期的散布は,うどんこ病に極めて弱いネットメロンのうどんこ病の発病を極めて効果的に抑制することが明らかとなり,微酸性電解水は多種類の農園芸作物においても有効に植物病害を抑制することができると考えられた。また,微酸性電解水の散布むらが微酸性電解水の効果発揮における課題であり,今後,微酸性電解水を植物体表面にむら無く散布する手段の検討が実用上必要であることが明らかとなった。この課題の解決が,微酸性電解水を実用的な抗菌資材として農業生産に利用することを可能にし,安全で高品質な農産物を低環境負荷で生産する手段を確立していくことが重要であると思われた。
解説:
森永乳業(株)のピュアスターMp-240を用いて生成した有効塩素濃度約30ppm、pH5.7~5.8の次亜塩素酸水を散布してうどんこ病に対する効果を調べた研究です。試験対象としたネットメロンに次亜塩素酸水の悪影響は認められず、うどんこ病の発病葉率が対照区(水のみを散布)の半分以下になり、既存の殺菌剤を散布するよりもやや高い効果があったということです。
葉の重なった部分など、次亜塩素酸水の行き届かない部分への散布ができるような工夫を施すことで、発病葉率をさらに下げることが期待できます。
次亜塩素酸水の食品産業への応用
弱酸性次亜塩素酸水溶液の各種芽胞に対する殺菌効果およびその適用事例討
(醸造への応用)
掲載誌: 日本醸造協会誌 V.107-2(2012)
概要: (要旨より引用)
酸性次亜塩素酸水溶液は本来アルカリ性の次亜塩素酸ナトリウムを塩酸で pH を 5.5 ~ 6.5 の弱酸域に調整し,殺菌作用の強い非解離型の次亜塩素酸の比率を増加させたもので,醸造食品の現場において問題となる芽胞菌の Bacillus 属菌や Clostridium 属菌に対しても殺菌効果が強い。
そこで,著者に実際の食品加工現場における適用事例について解説頂いた。
弱酸性次亜塩素酸水溶液は次亜塩素酸ナトリウムよりも低濃度・短時間で殺菌が可能であるために,食品や部材に対するダメージが少なく,塩素臭も低減されるので,
これを醸造食品工場において適用し,各種麹の一般細菌を含め特に芽胞菌を低減頂けるならば幸いである。
解説: 醸造などの微生物を利用する飲料や食品を製造する現場では有害微生物を効率よく絶滅させる手段が必須です。特に、熱や化学物質に対する耐久性が極めて高く,通常の熱処理やアルコール消毒では殺菌出きない有害な菌の芽胞を製造現場に持ち込まない、あるいは製造現場で完全に滅菌することが重要です。この資料では、弱酸性次亜塩素酸水溶液の弱酸性次亜塩素酸水溶液の実使用例 を紹介し、醸造関連施設全体の衛生管理に次亜塩素酸水を適用できるとしています。
次亜塩素酸水のオフィス等への応用
Hypochlorous Acid: A Review
(次亜塩素酸のレビュー~オフィス環境でCOVID-19ウイルスに対して次亜塩素酸水を使用する根拠)
掲載誌: Journal of Oral and Maxillofacial Surgery V.78-9(2020)(2021)
概要: (英文要旨を和訳)
外科医は、COVID-19ウイルスに対する消毒に効果的で、安価に入手可能で、毒性がなく、実用的な消毒剤を必要としている。この記事の目的は、オフィス環境で次亜塩素酸を使用する証拠を確認することである。推奨事項をまとめるために、この溶液が口腔顎顔面外科施設以外のさまざまな場所や業界で使用された結果が書かれている文献をレビューした。結果は、がCOVID-19ウイルスの消毒に使用できる可能性が高いことを示している。
解説: マスクやソーシャルディスタンス等の新型コロナウイルス対策と組み合わせて用いれば、次亜塩素酸水は「使いやすく、安価で、安全性に優れ、そして広範囲の殺菌および殺ウイルススペクトルをもつという、理想的な消毒剤としての要素を多く持っている」と締めくくられています。
次亜塩素酸水噴霧による除菌試験 試験結果のレポート
(実際のオフイスでの使用レポート)
掲載誌: 沖縄県環境科学センター 2020年7月6日
概要: (冒頭部を引用)
令和 2 年 2 月 14 日に沖縄県内で新型コロナウイルスの罹患者の 1 例目が発生した。
それ以降、沖縄県内でも新型コロナウイルスへの感染対策が本格的になっていった。
弊社でも、2 班体制の構築、消毒剤・スプレーの準備、基本的な感染症対策の啓発、新型コロナウイルス対策指針の整備などを進めてきた。
事務所内では、常時換気(窓の開放を含む)、ドアの開放、マスク着用、手洗い・うがいの推奨、70%のアルコールスプレーの設置、手指消毒、机や使用機材の消毒などを進めてきた。
しかし、新型コロナウイルスについては下記情報もあり、なるべく広範囲を消毒する必要性が感じられたが、アルコールや界面活性剤による拭き掃除のみで隅々まで消毒するのは、時間的にも物理的にも現実的ではなかった。
●室内の物の表面では 1~3 日程度失活しない。
●病院内にてクラスター感染が発生した原因の1つに、医者や看護師の靴の裏に新型コロナウイルスが付着し拡散していた可能性がある。
そこで、事務所全体を消毒する方法としては、メーカーからの下記情報より、次亜塩素酸水の噴霧が妥当な手法であると考えた。
●インフルエンザウイルスには効果があったため、同じようにエンベロープを持つ新型コロナウイルスにも消毒効果がある可能性がある。
●部屋内を除菌できる。
●比較的安価である。
●酸化反応は早く、残存しにくい。
●有毒性は報告されておらず、人が居ても噴霧できる。
しかし、次亜塩素酸水の空間除菌を控える見解があるなど(特に人がいる場所)、新型コロナウイルスを消毒するための、次亜塩素酸水の濃度や噴霧方法は確立されていなかった。
そこで、自社で検討することとしたが、我々は新型コロナウイルスを取り扱う条件を満たしていないため、一般生菌を指標とした。
本レポートが参考資料となり、新型コロナウイルス感染症対策の技術が向上すると幸いである。
※ 本試験は、弊社におけるコロナ対策の一貫として実施しており、試験精度や殺菌能力を保証するものではございませんのでご注意ください。
解説:
実際のオフイス内での次亜塩素酸水噴霧試験結果のレポートです。
学会誌に掲載される研究論文のように厳密な査読はなされていないと思います。しかしそれでも、数少ない実例を報告していただたという点で貴重です。
報告中に書かれているように、次亜塩素酸水の噴霧については
●人が居ない時間帯に噴霧し部屋全体の一般生菌を除菌することで薬剤を吸引することに伴う人体への悪影響を回避でき
●拭き掃除のみでの消毒が、時間的・物理的にネックとなる状況においては、非常に有効な消毒方法と成り得る
という点で大きなメリットがあり、今後もっと普及して良い手段だと思います。
一方、報告には
●就業時間中に、常時換気しドアを開放
●有効塩素濃度 20mg/L
●加湿器で噴霧
という条件で行った最初の実験で「複数の職員より喉への違和感が報告されたため、就業時間中の噴霧は中止した。」と記載されています。
自己責任で行う個人的スペースならばともかく、多数の人が存在する空間での次亜塩素酸水の噴霧については未だ解決すべき問題点が多いようです。
人体に無害で病原体には有効という噴霧技術とノウハウを確立するには今後さらなる努力が必要です。
家畜の基礎知識
暑熱対策は愛~快適な牛舎で牛を健康に飼う話~
掲載web: マイナビ農業
概要: (冒頭の一部)
牛は暑がりです。暑さにめっぽう弱いです。以前書いた記事にあるように、牛はルーメンという1番目の胃の中で餌を発酵させ、エネルギーを得ています。発酵は熱を放出するため、結果として暑さに弱くなるのです。牛が快適と感じる温度帯は、おおむね気温10℃くらいといわれています。
人の場合、気温が30℃を超える日は「今日は暑い日だから外には出たくない!」そんなふうに思いますよね。一方牛は、20℃からストレスを感じ始めるといいます。
その分寒さには強いので、牛を飼うのは寒い地方が適しているといわれてきました。
しかし昨今の温暖化は、日本から涼しい場所を無くしてしまいました。
日本の気温は100年あたり1.26℃上昇したといわれています(気象庁調べ)。
解説:
乳牛の体温は人間より1.5度高いので、暑さに弱く寒さに強い動物といわれています。 そのため、日本では北海道や東北北部、世界的に見ればアメリカ合衆国とカナダの境界付近、北ヨーロッパなどの冷涼なところが最も酪農の盛んな地域となっています。
★大分県の少雨・高温対策マニュアル(畜産)によれば「一般的に大家畜の臨界温度は、乳牛で26℃~27℃、肉用牛では臨界温度は正確な高温領域は判っていないが、肉牛においては湿度60%の場合は気温22℃ですでに暑熱ストレスを受けるとされている」そうです。
地球温暖化の進行によって、これまで涼しいと言われてきた地域も夏の一時期には熱波に襲われることが多くなってしまいました。
「クーラーなんて必要ない」といわれていた北海道ですが、熱中症による救急搬送者数が年々増加し、クーラー普及率も増加しています。
人と家畜の健康を維持するための暑熱対策もしっかり行う必要があるでしょう。