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未だコロナ禍が収まらない中で、次亜塩素酸水を商品の一部あるいは商品そのものとして取り扱っている弊社としては、商品の説明責任を果たす必要があると考えています。 そこで「次亜塩素酸」でweb検索するとリストアップされる様々な物質について、それらの特徴や、購入・使用にあたっての注意点などを解説していきます。
この記事の目指すところは、自社の商品を宣伝することではなく、ましてや他社の商品を貶めることでもなく、 ユーザーの方々がご自分の目的・用途に応じて製品を選択するための一助となることです。

目 次
次亜塩素酸ナトリウム
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム
水溶液を混合させて造る次亜塩素酸水
水の電気分解で造る次亜塩素酸水
イオン交換法で造る次亜塩素酸水
次亜塩素酸ナトリウムとは

まず最初に登場するのが、次亜塩素酸水と思って使用すると危険なことになるかもしれない次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)です。 塩化ナトリウム(NaCl)が陰イオンの塩素と陽イオンのナトリウムから成る「塩(えん)」であるように、次亜塩素酸ナトリウムは次亜塩素酸イオン(ClO-)とナトリウムイオンから成る塩です。塩化ナトリウムと異なり、大変不安定な物質ですので、水溶液としてしか取り扱えません。 webで検索すると「次亜塩素酸ナトリウム」、「次亜塩素酸ナトリウム液」あるいは「次亜塩素酸ナトリウム溶液」という名前で市販されていますが、いずれも次亜塩素酸ナトリウム水溶液のことです。

次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、一般的には水酸化ナトリウム(NaOH)の水溶液に塩素ガス(Cl2)を吹き込むことで造られます。 塩化ナトリウム水溶液を電気分解して、同時発生する水酸化ナトリウムと塩素ガスを反応させて造る方法もあります。 どちらの方法で製造しても、次亜塩素酸ナトリウムが生じる反応式は:
 2NaOH + Cl2 → NaClO + NaCl + H2O
となりますので、これらの方法で製造したものをそのまま製品とした場合は、次亜塩素酸ナトリウムと同じ物質量(モル数)の塩化ナトリウムが混入することになります。

主な用途は消毒、漂白、脱染(汚れ落とし)です。 具体的には、プールの水や水道水などの殺菌、クリーニングや製紙業界での漂白、金型の汚れ落としなどです。 どちらかというと一般家庭向けではありませんが、哺乳瓶の消毒などにも使われていますので、普通の家庭でも購入できてしまいます。 また、家庭用の漂白剤や漂白機能をもつ洗剤などの成分として、次亜塩素酸ナトリウムという名前をご存じない一般の家庭にも持ち込まれてしまいます。 「しまいます」という言葉を続けて用いたのは、間違った使い方をすると危険なものであることを表現したかったからです。

次亜塩素酸ナトリウムは危険?

次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤も含めて)が危険だという第一の理由は、原液の有効塩素濃度が1~12%と高いからです。 12%という濃度は食品添加物として規定されている次亜塩素酸水の有効塩素濃度の最大値(80ppm)の1,500倍ですし、 WHOがガイドラインとして定める水道水中の上限値(5ppm)の24,000倍にもなります。 ★健栄製薬の資料によると有効塩素濃度が0.04%以上の場合、ウサギ背部皮膚に対する皮膚刺激性(充血と炎症性細胞浸潤)が認められ、5%以上の濃度では壊死を生じています。
第二の理由は有効塩素濃度に応じて高くなるpHです。 有効塩素濃度5~12%の次亜塩素酸ナトリウムのpHは12.5~13.5という強アルカリ性(例えば★三重大学福崎先生のこの資料)です。このような強アルカリ液が皮膚にふれるとタンパク質が溶かされて「化学やけど」を引き起こす危険性があります。

「化学やけど」といわれてもピンとこないという方は★時事メディカルの記事をご覧ください。 特に、アルカリによるやけどは脂肪の酸化やたんぱく溶解をきたし、皮膚の深部まで入り込むということなので厄介です。 次亜塩素酸ナトリウム水溶液や家庭用漂白剤の原液が、万が一にも目に入ったなら大変です。 重大な障害を目に残す可能性があり、場合によっては失明してしまいますので、すぐに流水で目を洗い、近くの眼科を受診してください。

哺乳瓶消毒に用いる次亜塩素酸ナトリウムや一般家庭用の漂白剤など、pHが12を超えるような強アルカリ物質が家庭内に普通に使用されているのが現実です。 このようなものを扱う時はゴム手袋を、そして可能であれば防護眼鏡を着用する方が無難です。そして保管場所としては、決してお子さんの手の届かないところを選んでください

次亜塩素酸ナトリウムを薄めて使う

原液はpHや有効塩素濃度が高いので危険とはいえ、当然のことながら、十分薄めれば次亜塩素酸ナトリウム水溶液は飲んでも安全ということになります。 事実、ほとんどの自治体では水道水の消毒に水酸化ナトリウムを用いて、蛇口から出る水道水の有効塩素濃度が0.1~0.4mg/Lとなるように調節しています。0.1mg/L というのは水道法で決められている衛生上必要な最低濃度です。0.4mg/L というのは、それ以上の濃度では塩素臭が気になるためです。

では、もう少し高い有効塩素濃度ではどうでしょうか。 ★次亜塩素酸電解水の細胞傷害性およびアルカリホスファターゼ活性に及ぼす影響(中村ほか、2011)という論文では、水と炭酸および塩化ナトリウムを電気分解することにより生成される中性の電解水(歯科治療で使用されているパーフェクトペリオ)と水酸化ナトリウム水溶液の比較試験を行っています。この論文によると前者は有効塩素濃度100ppm(pH7.45)、後者は10ppm(pH8.4)を超えるあたりから細胞障害性が顕著になるようです。障害の出始める有効塩素濃度がこんなにも違うのは、pHの違いによるものと考えられます。 また、★三重大学の福崎先生の資料によると、青果物や食器・調理器具類の消毒には、有効塩素濃度が50~200ppm(pH 8~10)となるように希釈された次亜塩素酸ナトリウム水溶液が使用されているそうです。

以上のことから、有効塩素濃度が200ppm以下でpHが10以下であれば短時間肌に触れても強い刺激を感じないでしょうし、水滴が目に飛び込んでも流水で洗い流しておけば大丈夫と考えることができますが、長時間粘膜などのデリケートな部分に用いる場合、水酸化ナトリウム水溶液の有効塩素濃度は10ppm(pH8.4)以下に薄めるべきと言えるでしょう。 しかし、ここで知っておかなければいけないのは、このpH範囲では有効塩素の大部分が次亜塩素酸イオン(ClO-)として存在していることです(下図)。

有効塩素中のHClOの存在比率のpH依存性
25℃における有効塩素中のHClOの存在比率のpH依存性。

小寺・山田(2004)の図に加筆修正し、一般に用いられる次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム(Na)水溶液のpH範囲を示しました。 この図は水素イオン濃度[H+]が低く(pHが高く)なると反応 HClO → H+ + ClO が進んで次亜塩素酸イオンの割合が増え、水素イオン濃度が高く(pHが低く)なると反応 H+ + 2HClO → Cl2 + 2H2O が進んで塩素ガスの割合が増えることを示しています。 青線がCl2(塩素)との共存下でのHClO(次亜塩素酸分子)の存在率、赤線がClO(次亜塩素酸イオン)との共存下でのHClOの存在率を表します。低pH側ではCl2が、高pH側ではClOが優勢になりますが、pH2.2~6.5の間では次亜塩素酸分子が大部分を占めること、そして厚生労働省が食品添加物として認めた3種類の次亜塩素酸水のpH範囲がHClO優勢域に合致していることが見て取れます。 一般的に使用される次亜塩素酸ナトリウム希釈液の有効塩素濃度は50~200ppm(福﨑、2010)、市販されている原液の有効塩素濃度は4%(40,000ppm)以上あります。
ここで重要なことは、ClO殺菌力はHClOより二桁程度低いため、有効塩素濃度が同じであれば、pH5での殺菌力を100とした時、pHが高くなつにつれ、ほぼ赤線に沿って殺菌力(右側の目盛)が低下します。従って、有効塩素濃度が50ppmの次亜塩素酸水と同程度の殺菌力をもつ次亜塩素酸ナトリウム水溶液の有効塩素濃度は、pHが8の場合は150ppm以上、pHが9以上の場合は約5,000ppm(0.5%)にもなります。このような高濃度の有効塩素を含む水は取り扱いに注意が必要となります。

次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使い道は?

では次亜塩素酸ナトリウムの使い道は水道やプールの消毒くらいしか無いということでしょうか?

決してそんなことはありません。有効塩素濃度が高いということは危険である一方、消毒したい対象に対して少量の原液を用いるだけで済むということです。 例えば、厚生労働省子ども家庭局保育課の全国自治体向け事務連絡「★保育所等における新型コロナウイルスへの対応にかかる Q&A について」(令和4年5月25日) には、プール活動を行う際には遊離残留塩素濃度が 0.4 mg/L から 1.0 mg/Lに保たれるよう毎時間水質検査を行い、濃度が低下している場合は消毒剤を追加するなど、適切に消毒する。と書かれています。園児がプール中で遊べば有効塩素が消費されて濃度は下がっていきますから、この基準を満たすために例えば:
 ■ 一時間ごとにプールの有効塩素濃度を0.4mg/L上げる必要がある
 ■ プールの大きさ(貯水量)は10m3
と仮定した場合、一時間毎に4,000mgの有効塩素を投入することになります。 有効塩素濃度50ppmの次亜塩素酸水であれば80L必要になりますが、有効塩素濃度12%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液であれば33mLで済みます。

また、家畜伝染病の発生現場とその周辺の消毒など、病原体に汚染された多量の有機物などを消毒する際には、濃度50ppm程度の有効塩素では有機物との反応ですぐに消費されてしまいますので、全く役にたちません。そこで次亜塩素酸ナトリウムの出番となります。 このような場合には、強アルカリの原液をそのまま用いた場合でも、除染対象によって中和または希釈されてpHが下がることが期待出来ます。 そうなれば、次亜塩素酸イオン(ClO-)が次亜塩素酸(HClO)に変化します(上の図1をご覧ください)ので、消毒効果が大幅に増加するという大変都合の良いことも起こります。

以上の説明でおわかりいただけたと思いますが、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の長所も短所も「次亜塩素酸水に比べて高い有効塩素濃度で用いる」ことと「アルカリ性である」というところにあります。人の手指や家具など比較的汚れの少ないものの洗浄・除菌には、正しく用いれば十分な病原体不活化効果があって安全な、有効塩素濃度50ppm程度の次亜塩素酸水を用いるのが良いでしょう。一方、汚れのひどい排水口の洗浄や衣類の染み抜きなどには次亜塩素酸ナトリウムを含む家庭用漂白剤(有効塩素濃度は数%)が手軽に使用できるでしょうし、多量にあるプールの水の消毒や広範囲に及ぶ本格的な消毒が必要となった場合には、取り扱いに注意は必要ですが、有効塩素濃度5~12%ほどの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を入手するのが良いと思います。

 

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ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム

水に溶かせば次亜塩素酸水ができると称して販売されている製品のほとんどがジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(C3Cl2N3NaO3)そのものか、あるいはそれを有効成分としています。 あまり長い名前は読みにくいので、今後は英語名 Sodium Dichloroisocyanurate の略称 SDCI を用いることにします。 次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が次亜塩素酸(HClO)の水素(H)をナトリウム(Na)で置き換えた塩であるように、 SDCI はジクロロイソシアヌル酸(C3HCl2N3O3)の水素をナトリウムに置き換えた塩です。 固体としては不安定なため水溶液の形でしか供給できないな次亜塩素酸ナトリウムとは異なり、SDCI は白色顆粒状の個体として販売されています。

SDCI は水に溶かすと次のようにイソシアヌル酸ナトリウムと次亜塩素酸に加水分解します。
 NaCl2C3N3O3 + 2H2O → NaH2C3N3O3 + 2HClO
つまり「溶かせば次亜塩素酸水ができる」というわけです。

ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの安全性

水に溶かす前のSDCI の安全性ついては★ILOが公開しているデータシートをご覧ください。 「不燃性だが、他の物質の燃焼を助長」するほか、「吸入すると咳や咽頭痛」、「皮膚につけると発赤、皮膚熱傷、痛み」 、「眼に入ると充血、痛み、視力喪失、重度の熱傷」、「飲み込むと灼熱間、咽頭痛」等々を引き起こす可能性があるということですから、非常に危険という程ではないにしろ、取り扱いには充分な注意が必要なようです。 SDCIの水への溶解度は25g/100mlと極めて大きく、飽和するまで水に溶かすと有効塩素濃度換算値はおよそ8%になります。 ですから、もしSDCIの粒が目の中に入れば、目の中の水分と反応して局所的に高濃度の次亜塩素酸が発生します。次亜塩素酸水中の次亜塩素酸が安全といわれているのは有効塩素濃度が50ppm程度と低いからです。有効塩素濃度が%のオーダーになれば次亜塩素酸水とはいっても塩素による強い刺激が目の粘膜に与えられます。 製造元のひとつである★富士フイルム和光純薬株式会社の安全データシートによりますと、水に溶かした時(10g/L、25℃)のpHは6.0~7.0とほぼ中性ですが、固体粒状のSDCIが水分と反応すると強力な酸化作用をおこしますので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の原液を取り扱うのと同様の注意が必要となります。ですからやはり、お子さんの手が届かないところに保管しなければなりません。
同じデータシートには「応急措置」として次のような注意書きがあります:

■吸入した場合:新鮮な空気のある場所に移すこと。 症状が続く場合には、医師に連絡すること。
■皮膚に付着した場合:すぐに石鹸と大量の水で洗浄すること。 症状が続く場合には、医師に連絡すること。
■眼に入った場合:眼に入った場合、数分間気を付けて洗浄する。もしコンタクトを装着していて、容易に取り外せるなら、取り外す。その後も洗浄を続ける。 直ちに医師の手当てを受ける必要がある。
■飲み込んだ場合:口をすすぐ。 意識のない人の口には何も与えないこと。 ただちに医師もしくは毒物管理センターに連絡すること。 医師の指示がない場合には、無理に吐かせないこと。
■応急処置をする者の保護に必要な注意事項:個人用保護具を着用すること。

以上は、あくまでも顆粒状のSDCIの安全性と取り扱い上の注意事項です。 では水に溶かした場合の安全性はどうなのでしょうか。 既に書いたようにSDCIを水に溶かすとイソシアヌル酸ナトリウムと次亜塩素酸が生じてpHは6~7ほどになります。 このpHであれば次亜塩素酸の濃度が高すぎないように調整すれば皮膚に対しては刺激がなさそうに見えますが、次亜塩素と同時に発生してしまうイソシアヌル酸ナトリウムの安全性が問題となりそうです。

ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液の安全性

日本では、イソシアヌル酸類の化合物がプールや温浴施設、浄化槽等の殺菌・消毒剤として使用されているほか、動物用の消毒剤としてジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが承認されています。豚や鶏が飲む水の消毒剤としての使用基準も定められています。 安全性の根拠については、食品安全委員会が2020年9月に報告した★「動物用医薬品評価書 ジクロロイソシアヌル酸」があります。 この評価書の中にはイソシアヌル酸又はシアヌル酸及びこれらのナトリウム塩を用いた動物試験結果が報告されています。 それによると、ほとんどの試験で試験動物に異常は認められませんでした、しかし問題となりそうなのは:
ラット又はマウスを用いたイソシアヌル酸又はシアヌル酸ナトリウムの亜急性毒性試験において、 しばしば結石形成と膀胱粘膜上皮過形成を伴う腎又は尿路系の傷害がみられた。
という点です。結果としてADI(1日摂取許容量)は0.86 mg/kg 体重/日(イソシアヌル酸として)となっています。

以上のことから、SDCIを用いて消毒されたプールや浴槽の水が口に少し入っても大きな問題はなさそうですが、決して無害とは言い切れません。 また、上記の通り個体のSDCIの取り扱いには十分注意しなければなりませんし、多量のシアヌル酸化合物が自然界に放出された場合はどうなるのか、それを推測するにはいまのところデータ不足というしかありません。

もうひとつ注意しておくべきことがあります。 製品評価技術基盤機構による ★新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価結果 によると、新型コロナウイルスに効果のある有効塩素濃度は、次亜塩素酸水が35ppm以上であるのに対し、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは100ppm以上と3倍もの差があります。有効塩素濃度100ppmという数値は肌に触れると危険というほどではありません。しかし、同じ除菌効果が得られるのであれば、少しでも有効塩素濃度の低い方が人体に対して悪影響が少ないということは確かです。プールや浴場の消毒に用いる場合は残留塩素基準が0.4~1ppmですから問題にはなりませんが、手指の除菌などに日常的に用いることは避けた方が賢明でしょう。

 

水溶液を混合させて造る次亜塩素酸水

市場には2種類あるいはそれ以上の水溶液を混合して製造した次亜塩素酸水も数多く流通しています。 そのほとんどのものは次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を塩酸と混合して弱酸性の溶液になるよう調整したものです。
NaClO + HCl → HClO + NaCl

この製法のメリットは高濃度の次亜塩素酸水を低コストで容易に製造できることにつきます。 しかし、上の反応式が示すように、次亜塩素酸と同じ物質量の食塩(塩化ナトリウム、NaCl)が生成してしまいます。 このため、2室型の電気分解装置で製造した次亜塩素酸水と同じ問題が発生することになります。 つまり、金属の腐食を引き起こす原因となり、農地に散布すると塩害を引き起こします。 また、電気分解により作られたものではありませんので、厚生労働省の食品添加物として用いることはできません。

以上のような問題がありますが、溶液混合による次亜塩素酸水の製造は電気分解よりも低コストですので、塩分を含むことが問題にならないような場面では選択肢のひとつとなるでしょう。

 

水の電気分解で造る次亜塩素酸水

電気分解で次亜塩素酸水を製造する3種類の装置については次亜塩素酸水製造装置として別ページに説明がありますので、そちらをご覧ください。ここではそれぞれの装置で製造される次亜塩素酸水の特徴について説明します。

一室型電気分解装置で造る微酸性次亜塩素酸水

一室型装置の原理については★こちらをご覧ください

一室型の電気分解装置で製造する次亜塩素酸水は原料として塩化ナトリウム(NaCl)ではなく塩化水素(HCl)を用いる点が特徴です。 この装置で製造した次亜塩素酸水の有効塩素濃度が10~80mg/L、pHが5~6.5の範囲にあれば、厚生労働省が定める食品添加物としての微酸性次亜塩水ということになります。つまり、食品安全委員会が多くのデータを元に検討を重ねて安全性が確認されたものとみなされます。

二室型電気分解装置で造る次亜塩素酸水

二室型装置の原理については★こちらをご覧ください

二室型電気分解装置で造られる次亜塩素酸水は強酸性~弱酸性となります。 この装置で製造された次亜塩素酸水が有効塩素 20~60mg/L、pHが2.7以下であれば、厚生労働省が定める食品添加物としての強酸性次亜塩素酸水に該当し、 有効塩素 10~60mg/L、pHが2.7以下であれば、弱酸性次亜塩素酸水に該当します。 つまり、数多くのデータにより安全性が裏付けられているということになります。

二室型電気分解装置で造られる次亜塩素酸水は塩化ナトリウム(NaCl)の混入が避けられませんので、 混合法で造られた次亜塩素酸水と同じように金属の腐食を引き起こす原因となり、農地に散布すると塩害を引き起こす等の欠点があります。

三室型電気分解装置で造る次亜塩素酸水

三室型装置の原理については★こちらをご覧ください

三室型電気分解装置で造られる次亜塩素酸水も、二室型で造られるものと同じ強酸性および弱酸性次亜塩素酸水です。 大きな相違は、三室型で造られるものが塩化ナトリウムを含まないということです。 従って、二室型の電気分解装置で造られる次亜塩素酸水と同じ長所を持つことに加えて、金属などの腐食を引き起こしにくく、多量に用いても農地などに塩害を引き起こす心配が無いという利点があります。

電気分解装置の相互比較

3つのタイプの電解装置の長所と短所を以下に纏めます。 いずれも、食品添加物としての基準を満たす次亜塩素酸水を同じ有効塩素濃度で製造した場合の比較です。

室数長所短所
1 構造が簡単なため装置を造るコストが最も低い。
次亜塩素酸水のpHが中性に近いので刺激が少ない。
原料である塩酸が高価。
法的な面でも安全面でも、塩酸の取扱いが面倒。
酸耐性の低い病原体に対しては効果が落ちる。
2 原料である塩化ナトリウムが安価で扱いやすい。
装置を造るコストが三室型よりは低い。
次亜塩素酸水に塩化ナトリウムが混入する。
3 原料である塩化ナトリウムが安価で扱いやすい。
次亜塩素酸水に塩化ナトリウムが混入しない。
装置を造るコストが最も高い。

 

イオン交換法で造る次亜塩素酸水

次亜塩素酸水を製造する方法としてイオン交換法というものもあります。 陽イオン交換樹脂を水酸化ナトリウム水溶液に浸して、ナトリウムイオンと水素イオンを交換する方法です。
NaClO + H+ → HClO + Na+
つまり、陽イオン交換樹脂の詰まった容器にNaClO水溶液を注入して、充分な時間をかけて反応させればHCl水溶液になって出てくるというものです。

化学反応としては非常に単純なものですが、比較的有効塩素濃度が高いものも製造でき、塩酸等で調整すればpHの調節もできるという点が長所です。
イオン交換法の短所は:

といったようなところでしょうか。

以上のことから、有効塩素濃度が高くて不純物の少ない次亜塩素酸水の欲しい時にはイオン交換法というものがある、と覚えておけば良いでしょう。 電気分解法では有効塩素濃度が100mg/Lを超える次亜塩素酸水を製造するのが困難であり、混合法ではどうしても塩化ナトリウムなどの不純物ができてしまうからです。

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